「サヴォワ邸の明るい時」、
最近感銘を受けたこの本の話を。
サヴォワ邸は近代建築の巨匠であるル・コルビュジエがキャリアの初期に手がけた住宅で、世界遺産に登録されているほどの歴史的建築物。パリ郊外の観光地として今も多くの人が訪れています。
私もちょうど先日パリへ行く機会があったのに、都合がつかずそのまま帰ってきたのでした。大きな声で言いにくいですが、実はそれまでコルビュジエのシンプルで合理的な建築の良さを十分には理解していませんでした。
ですが先日訪れた神楽坂の日仏学院の建物がとてもモダンながらシックで素敵なことを知り、それがコルビュジェに師事した建築家 坂倉順三の作品であったり、久々に会った友人にこの本を紹介してもらったり、仕事で関わりの深い建築家の狛亜津紗さんから画家でもあったコルビュジエの話をたびたび聞くことがあったりで、コルビジェがキーワードになることが続き、やはり彼が遺したものを学んでおくべきだと思い直しました。
そしてまず最初に手にとったのが、友人がすすめてくれたこの本です。サヴォワ夫妻の孫が書いたこの本は、建物の設計図や施主であるサヴォワ夫妻とコルビュジエの手紙のやり取りを通して、どのようにサヴォワ邸が建てられていったのかをつまびらかにしています。味のある挿絵と平易な文章は、建築のもつ難解さを排除していて人間味あふれるドキュメンタリーを読んでいるような気になり一気読みしてしまいました。

パリ郊外に建つ偉大な建築家の作品と聞けば完璧な印象を受けるのですが、本を読むと夫妻がコルビュジエにダメ出しをしていたり、雨漏りの修繕を依頼する手紙を送っていたりと、実際にそこで暮らすからこそ出てくる困りごとや課題がリアル。当時の手紙やメモも出てくるので、空気感までがありありと浮かんできます。ちょっとヒヤヒヤする内容なんかもあったりして。

レジェンドとされているコルビュジェですが、当時は施主とやり取りしながら要望に応えたりフィードバックを受けて手直しをしたりと、我々と同じく仕事をしていたことを知り、当然ですが血の通った一人の人間であったのだと感じられ、だからこそ近代建築における五つの要素(ピロティ/屋上庭園/自由な平面/水平連続窓/自由なファサード)やモダニズム建築様式などを生み出したその偉大さも同時に思い知るのでした。
『サヴォワ邸の明るい時』ジャン=マルク・サヴォワ著 2024年12月発行

