3月末、神奈川県三浦郡葉山に誕生したばかりのCasa CABaN HAYAMAは、老舗アパレルブランドであるトゥモローランドが手がける客室14室のブティックホテル。
同社が展開する遊び心のあるアパレルブランド「CABaN」と同じ名前を冠したこのホテル、当代きっての人気インテリアデザイナーであり建築家のパトリシア・ウルキオラのチームが設計から建築、内装、インテリアまでトータルで担当したということでずっと気になっていました。そして開業から1ケ月たった4月末訪れてみました。
ホテルはメイン道路国道134号線を一歩入った住宅が建ち並ぶ一角に位置します。

館内に一歩足を踏み入れたとたんに柄、色、形のシャワーが降り注ぐウルキオラの世界が広がります。ウルキオラデザインの人気家具やラグのみならず、壁面にはこれまたウルキオラ制作の色とりどりのアート作品が飾られるとともに選び抜かれた小物がディスプレイされていて、もうウルキオラという玉手箱の中に入りこんだような気分になります。

アイコニックなラウンジ。セングウのソファーを中心にウルキオラデザインの人気デザイン家具が数多く配され、さながらギャラリーのよう
「Weaving(編み込んでいく)」がコンセプトだというこのホテル。ニットからスタートしたトゥモローランドへの敬意であり、時間と空間を編みこんだ環境が人を優しく包みこんでいく、という思いが形になっています。

ロビー。Weavingを想起するようなラグと壁面装飾

ラウンジにいたる廊下にもちょっとユニークなアクセサリーで飾り付け
ラグデザインが編み目模様になっていたり、壁面素材が格子状に組まれたモチーフだったりと、館内のあらゆるところに「網目」が取り入れられていて、トゥモローランドの原点が建築やインテリアにも反映されています。

廊下からラウンジをのぞく。テラコッタ色のラグがものすごく可愛かった!
格子の壁から優しく注ぐ森戸海岸の光がなんとも穏やかだったのが印象的でした。

ラウンジからの景色。目の前は砂浜。海が真っ赤に染まる瞬間も独り占めできる特等席
このホテルが建つまでにはトゥモローランドの会長である佐々木啓之氏とウルキオラの長年にわたる友情が土台にあるそうです。
トゥモローランドが展開するアパレルブランド「デ・プレ」の店舗内装をウルキオラが担当したことで知り合った二人。当時彼女はまだ無名のデザイナーでしたが、佐々木氏はさらにその数年前、パリに訪れた際すでに彼女の作品を見てその才能を認めていたそう。

ラウンジの円柱。タイルづかいもとても素敵だった。この緑のタイルはイタリアのもの。アートはすべてウルキオラ作のものだが、佐々木氏所蔵の草間彌生の絵だけは飾るオッケーがでたのだとか

ラウンジのバーコーナー。ハイスツールと照明がまたまたキュート
以降お互い仕事に邁進する中でクリエイティビティを刺激しあいながら絆を深めてきたのだと思います。
佐々木氏率いるトゥモローランドは高品質な服作りと圧倒的な空間演出で日本のアパレル業界においてリーダー的な存在となり、またウルキオラは自身のデザインスタジオを構え2015年にはカッシーナのクリエイティブディレクターに就任するなど、インテリア・デザイン業界では誰もが知る存在となっていきます。
2人はまさに切磋琢磨してきたのではないでしょうか。

客室。Weavingを感じさせるテラコッタ・ブルーのラグが空間を引き締めていた
ですがある時期仕事に疲れてしまったというウルキオラ。
連絡を受けた佐々木氏の誘いで訪れたこの葉山の景色に彼女が感動し、そこからホテル構想が始まったそう。そして、佐々木氏はすべてのディレクションをウルキオラに一任しました。
だからこそCasa CABaN HAYAMAはパトリシア・ウルキオラの美意識を隅から隅まで堪能できる場所となっています。
そのスタイルはデザインした多くの家具同様、遊び心に満ちていいて、色遣い・素材・フォルムすべてがユニーク。スペインで生まれ育ち長年イタリアで仕事をしてきた彼女が見てきたものとその感性が溶け合って、他のホテルとはまったく違う遊び心溢れたホテル空間となっています。
建物もインテリアもワクワクさせてくれる一方で、そのサイズ感やこだわりが誰かの家のように親密な感じがあり、インスピレーションを与えてくれます。

客室。リビングのラグもとってもデコラティブ。通常のホテルと違い、装飾用の備品が数多く使用されているのも個人の邸宅感を醸しだしている要因

客室の遊び心溢れるアート。部屋のあちこちにアートが設えられている

バスルームの陶器製ドアハンドル。そら豆みたいな形がユニーク
ホテルが生まれるまでのストーリーを知って、改めてその空間や雰囲気を思い返すと、空間デザインやアートや家具、つまりインテリアというのは、その人のこれまでの生き方や経験の集大成として表れるものなのだろうと感じました。
その中にはもちろん人との出会いが大きく関わっているはずです。ホテルの空間にいると、自分がどんな状況にあろうとも、変わらず信じて気にかけてくれる親友がいる人生への喜びや安心感のようなものが伝わってくるのでした。

レストラン。壁にはモコモコの織物アート。床のタイルもオリジナル。椅子はおなじみのデュデット
今回は、ホテル滞在ではなく、おうし座生まれの友人との合同の誕生日ディナーを愉しんだ時間でしたが、さすが海、山、野の地産に恵まれた葉山だけあって極めて本当にうなるほど美味しい食事だったのも含め、5感を刺激する記憶に刻まれた大切な一日となりました。

