建築家の狛デザイン一級建築士事務所の狛亜津紗さん設計の「大阪府の家」。
インテリアコーディネーターとして関わることができたこのプロジェクトが先日無事お引渡しの日を迎えました。
一つの家がつくられていく過程を間近で見ながら感じたことを書いてみようと思います。

料理がお好きだというお客様。食を楽しむこと、そこに人と人のつながりが生まれることを大切にされていて、週末にはご友人を招いてホームパーティーを開かれるそう。また、リビングでの一家団らんの時間も大切にされるとのことでした。
こうしてヒアリングしたお客様の要望を建築という形で創り上げていくのが狛さん。彼女とは建築インテリア雑誌「モダンリビング」がきっかけで出会いました。
狛さんは同誌が毎年開催している建築家を対象としたアワード「モダンリビング大賞ベスト6」の受賞者として、私はインテリアコーディネーターを対象としたアワード「スタイリング・デザイン賞」で最終選考にノミネートされ、授賞式に参加した際に偶然同じテーブルとなり、そこで手がけている仕事のことなどについて楽しくお話をさせていただきました。
それから半年近くが過ぎたころに狛さんからご連絡をいただき、今回とは別のプロジェクトでの仕事でご一緒する機会をいただいたのが始まりです。

今回は、設計の初期段階から関わることにより、狛さんの仕事の過程を見る機会に恵まれたわけですが、無尽蔵にあふれ出てくるアイデアや、それを実現する力、クリエイティビティの質の高さを目の当たりにしました。
一度詰めたはずのプランが次の打ち合わせではさらに進化していることも多くありました。それはいつもお客様に最善のプランを考えて、果敢にチャレンジを続ける姿勢の表れなのだと思います。
さらに驚くのが彼女の求心力。周りには自然と協力者が集まってくるような独特の雰囲気が感じられます。それは考え抜いた上に、形にする努力を惜しまないからなのでは思います。
「本当によいものを作りたい。そのためには、もっとこうした方がよいと思ったら遠慮なく言って欲しい」「みんなで協力してよいものを作っていきたい」会うたびに狛さんから聞く言葉です。その才能と仕事ぶりはもちろん、いつもフェアで実直なその人となりに、若いのに懐が深い人だなあ~、といつも感じ入っています。
さて、この家で象徴的なのが流線形のキッチン。お客様が選ばれたピエール・ジャンヌレのダイニングチェアが持つ強い個性を柔らかな曲線が一切の力みなく包み込むという、独創的なバランスの取り方です。さらにキッチンとリビングをつなぐステップにも同じ曲線を用いることで空間に一体感が生まれ、お客様が大切にしている、人とのつながり、食を楽しむこと、家族と過ごす心地よい空間への思いをかなえる構造になっています。

建設が着々と進む中、かなり頻繁なペースで狛さんとリモートや電話での打ち合わせをしながら、私もインテリアのプランを練っていきました。お家にはキッチンとリビングだけでなく、そこからすぐに出られる半屋外のテラス、吹き抜けの一階と二階など、シームレスにつながる要素が多く“心地よくつながる大空間の家”と捉えながら、この美しい建築に多くのデザイン要素を加えるのは違うな、と考えました。完成された美しい空間を邪魔することなく、ほんの一振りのスパイスを加えるのがベストだと思い、厳選したアイテムが美しい造形を引き立てるよう、目立ち過ぎないながらも遊び心や楽しさが感じられて、さらに活力が湧くようなものを探していきました。
インテリアに使うアイテム数が少ないだけに、セレクトには徹底的にこだわりました。例えば作り付けの飾り棚にディスプレイする一冊の本。オリジナリティのある空間にしっくりくると思うものが見つかるまで、数軒の洋書店を回って見つけ出したものです。お客様がリビングに選んだ深い緑色のソファーとリンクして、インテリアのちょっとしたポイントになってくれました。
さらに狛さんの仕事の大きな特徴として、手がけたお家に自らが描いたアートを贈るという心遣いがあります。今回の家でも広々とした玄関にジャンヌレのベンチをセットし、オリジナルのアートが飾られました。その家を設計した建築家による、その家のためだけのアート。究極のインテリアピースといえるかもしれません。

俯瞰する能力に繊細な心遣い、大胆な実行力。そのすべてを必要とする建築家は、例えるなら家づくりというオーケストラの指揮者でありながら、コンサートマスターとしても美しい音楽を奏でるような存在です。今回私もその一員として、美しい演奏の一端を担えていたのであれば嬉しく思います。
改めてお施主様、狛デザイン一級建築士事務所の皆様、建設に携わった皆様にもお礼を申し上げます。素晴らしいプロジェクトに参加できたこと、ありがとうございました。
※「モダンリビング」(2026年7月号)に今回のプロジェクト「豊中の家」が特集記事として掲載されました。また表紙も飾っています。ご一読いただけると嬉しいです。

