日本で長く愛される陶芸家、ルーシー・リー。
先日、東京都庭園美術館で行われているその展示会「ルーシー・リー展〜東西をつなぐ優美のうつわ〜」に行ってきました(会期は、7月4日~9月13日)。
インテリアデザインやコーディネートを考える上において東洋×西洋のシナジーを大切にしているO’baliとしては、とても親近感を覚えるタイトル。会場の庭園美術館も、言わずと知れた旧朝香宮邸の名建築であり、東洋と西洋それぞれの名匠による技術が結集した空間です。

鮮やかな色彩が魅力のうつわ
ターコイズブルー、ベビーピンク、カナリアイエローなど、ルーシー・リーの器は “色”が印象的。実は彼女の父親は医師であり、科学的な環境が身近にあったため、化学物質を何パーセント混ぜれば狙い通りの発色になるのか、生涯を通じて釉薬の実験と研究を重ね、それまで一般的ではなかった鮮やかな色彩を陶器にもたらしたそうです。




ルーシー・リーはさらに、浅い溝に別の色の化粧土を埋め込んで文様を表現する【象嵌=ぞうがん】や、塗った釉薬を金属の針などで削り取って素地や下層の色彩を露出させ、浅い溝に別の色の化粧土を埋め込んで文様を表現する【掻き落とし=かきおとし】などの凝った手法を取り入れるなど、高い技術力によって独創的で美しい器を生み出しました。薄くて繊細な焼き上がりから感じられるモダンさ、表面のわずかな凹凸から感じられる人の温もり、そして作品から放たれるハッピーなオーラ!きっと誰もが魅了され“ルーシー・リーとはどんな人物だったのだろう?”と知りたくなるはず。

山あり谷ありな人生
ウィーンの裕福なユダヤ人家庭の一人娘として生まれ、両親に大切に育てられたというルーシー。陶芸家として順調にキャリアを摘んでいた中で第二次世界大戦が起こり、迫害から逃れるためにイギリス・ロンドンへ亡命。活動を再開しますが、イギリス陶芸界の絶対的存在だったバーナード・リーチに作品を酷評され窮地に。生活にも困り、陶器のボタンを作って凌ぐ暮らし。かなりヘビーな体験をしていますが、彼女の作品に悲壮感はまったく感じられません。貧しさでキャベツばかり食べていたその頃のことを“キャベツの日々”と呼んでいたエピソードも、失礼ながら可愛く聞こえてしまうほど、どこか呑気な気配なのが印象的です。



結局、陶器のボタンはたちまち評判となり、ファッションデザイナーの三宅一生氏も現地で彼女のボタンに惚れ込み自らのコレクションに登場させていること、彼女を酷評したバーナード・リーチとの交流もずっと続いていて、ルーシー自身も、リーチが傾倒していた日本の民藝活動に関わりを持ち、運動を推進していた柳宗悦や濱田庄司とも親交を深めたり、東洋の器を研究して自分らしく作品に取り込んだりしていたこと。最終的にリーチは彼女を陶芸家として認め、応援したこと(今回の展示会では親交の深かった前述の作家たちの作品も見ることができます!)。すべての困難をまるで真綿のようにふわりと受け止め、自分の糧に変えてしまうルーシー・リー。その力がたくさんの人を惹きつけ、自身の人生を明るい方へと導いたように感じます。
人柄が垣間見れるうつわ
それは幼少期の幸せな記憶が彼女の土台となり、気高さやしなやかな強さを揺るぎないものにしていたからではないでしょうか。戦争も批判も貧困も、彼女の素直さや心の自由、ほとばしる情熱を奪うことはできなかった。真綿のように白い服に身を包み、チャーミングな笑顔を浮かべているルーシーの姿を見ると、彼女が持っていた純粋さや強さが感じられます。

今回一番心に残った作品は、やはりメインビジュアルとなっているターコイズブルーのもの。淵からブロンズの釉薬が垂れているそのうつわは、澄み切っているのに味わい深い今までに出会ったことのない色でした。まるでルーシーの人柄そのもののように感じたくらい。
展示会の後は心が軽く、温かくなっているはず。今回の展覧会でますます彼女のファンになってしまったのでした。

展覧会情報
ルーシー・リー展 「―東西をつなぐ優美のうつわ―」
会期:2026年7月4日(土) – 9月13日(日)
時間:10時 〜 18時( 8月7日、14日、21日、28日(金)は21:00まで開館)
会場:東京都庭園美術館(本館+新館)
休館日:毎週月曜日
観覧料:1,400円(日時指定予約制。来館前のチケット購入が必要です)

